呼吸器科センターこのページを印刷する - 呼吸器科センター

呼吸器センターの設立とその展望について

平成23年8月1日から呼吸器内科と呼吸器外科は統合し、呼吸器センターとして生まれ変わりました。
呼吸器センター設立の目的は、呼吸器疾患で悩んでいる患者さんに診療科の壁を越え内科から外科にいたるまで切れ目のない医療を提供することです。センター化することにより呼吸器疾患を持つ患者さんに対して内科系疾患、外科系疾患にかかわらず、いつでも対応できるようになるだけでなく、その他の診療科や他の部門との連携が今まで以上に容易になり、患者さんにより良質の医療を行うことができるようになります。放射線科医、病理医を加え検討会を実施することで、疾患を正確に診断し個々の患者さんに適切な治療法を選択することが可能となります。また、リハビリテーション科、薬剤科、放射線科、臨床検査科、栄養管理室部門などコメディカルと協力して呼吸器疾患を包括的に診療することができるようになります。呼吸器センターは「内科系部門」と「外科系部門」により構成されますが、診療、研究、教育にお互い密接に関与することにより両部門を相乗的に発展させ、呼吸器疾患の専門性を高めていきたいと思います。しかし、一方、内科系部門は従来通り内科系診療科の一部門として、外科系部門は外科系診療科の一部門としてこれまで以上に他診療科との連携を重視して診療にあたりたいと思います。
呼吸器センターを充実させ呼吸器疾患の医療に対し臨床のみならず、若手医師育成にも貢献したいと思っております。

代表的な呼吸器疾患について

肺がん

悪性疾患は、日本人の死因の約30%を占め、第1位となっており、その中でも肺癌患者の死亡者数は約6万人であり、男性では第1位、女性では大腸癌に続く第2位となっています。
肺癌に対する治療法には大きく分けて手術、化学療法、放射線治療があり、肺癌の組織型および病期に応じて選択されます。
当センターでは、呼吸器内科が中心となって気管支鏡検査・CT・MRI画像等により肺癌の診断を進め、全体的な治療戦略を立案しています。最近の多彩な抗がん剤・分子標的薬に対応しつつ、術前・術後を含めたほとんどの化学療法を呼吸器内科が実施しています。また緩和療法にも積極的に取組んでいます。
肺癌手術は、呼吸器外科が担当し、低侵襲な胸腔鏡手術を基本としながら、適正手術をこころがけています。その他、胸腔鏡検査、縦隔鏡検査も行っており、呼吸器外科が診断の一部を担っています。
病理診断は常勤の病理医により、迅速で詳細な対応が可能となっています。
放射線治療は放射線治療専門医のもとで、根治あるいは緩和を目的とした多種の放射線治療が行われています。
もともとこれら診療科の連携は密でしたが、呼吸器センター設立に伴い、多様化する肺癌治療に対応し、質の高い患者様ひとりひとりにあった肺癌オーダーメイド治療を適切に行うことができると考えています。

自然気胸

自然気胸は肺の中のブラ、ブレブといった嚢胞が破綻することによっておこる疾患です。中等度以上では応急処置として胸腔内にドレーンを挿入することにより胸腔内より脱気をする必要があります。ドレーンの挿入は内科・外科の何れもが迅速に対応します。治療としては、大半は安静にすることで自然軽快しますが1. 持続的であるもの2. 血胸を伴うもの3. 側性のもの4. 大量の気漏があるものなどは手術適応があると判断します。また、自然軽快した気胸の再発率は20~50%以上と比較的高いとされており、当院では患者様と相談の上、胸腔鏡下手術を行うことで再発率を5~6%の低値にすることに努めています。通常は側胸部に2cmまでの傷が3~4ヶ所とご本人の負担も少なく、多くの方が術後4~5日程度で退院されます。

細菌性肺炎

当院では初診時肺炎と診断した場合、原則として喀痰のグラム染色と培養を行い、血液培養を採取、尿中肺炎球菌抗原等を提出し、原因菌の確定に努めます。初期の治療としては、喀痰グラム染色や尿中抗原から原因菌が推定できる場合は、その菌に最適な抗菌薬を選択することとしています。この際には診察室のコンピューターより当院で検出された主要な細菌に対する抗菌薬の感受性の程度が参照できるシステムが構築されており、決定をサポートします
しかしながら原因菌が推定困難で重症の症例では、救命のため最後のとりでのような広域抗菌薬を最初から使用せざるを得ない場合もあります。反面広域抗菌薬は正常の細菌叢を乱し、多剤耐性菌を発生させるリスクを伴いますので必要最小限の使用にしたいところです。忙しい現場でも肺炎患者に対し客観的な評価を行い、より絞り込んだ的確な治療ができるようにしています。そのことが、限られた数の抗菌薬から臨床効果を最大限引き出し、耐性菌の出現を最小限にし、病院や地域社会の感染制御に貢献することだと考えています。

肺結核

当院の結核病棟は、2000年10月に国立療養所東高知病院と統合した歴史があります。当初は50床を有しておりましたが、近年の結核患者の減少に伴い現在は22床にて運営しております。減少傾向とはいっても肺結核はいまだに重要な感染症であり、適切な診断と治療が不可欠なことは言うまでもありません。また高知県中央部の中核的な施設として多剤耐性結核などの難治性結核への対応もおこなっております。また、近年、非結核性抗酸菌症の患者さんの増加傾向もあり、専門施設として診療にあたっております。
肺抗酸菌症の診断は喀痰検査が主体ですが、近年の画像診断の進歩により喀痰検査では診断に至らない初期病変が見つかることも多く、当センターでは呼吸器内科での気管支鏡検査や呼吸器外科での胸腔鏡下肺生検を積極的に実施して鑑別診断を行っています。

また、適応例には根治を目的とした外科治療を実施しています。

びまん性肺疾患

びまん性肺疾患は両側びまん性に陰影を呈する疾患の総称であり、極めて多くの疾患が含まれますが、代表的疾患として間質性肺炎があります。間質性肺炎は、さまざまな原因から肺胞壁に炎症をおこし線維化に進行し、呼吸をしてもガス交換ができにくくなる病気です。間質性肺炎の原因には膠原病などの自己免疫疾患、職業上や生活上でのほこり、カビ、ペットの毛、羽毛などの慢性的吸入、薬剤、漢方薬、サプリメントなどの健康食品、特殊な感染症などさまざまなものがあることが知られていますが、原因不明のものを特発性間質性肺炎といいます。
びまん性肺疾患の診断には気管支鏡検査で採取される組織では不十分なことが多く、当院では胸腔鏡下肺生検を積極的に実施して、これらの病気の原因究明や治療を行っています。また、定期的に院内でびまん性肺疾患研究会を開催し、症例検討を行っています。

気管支喘息

難治性の気管支喘息から新たに診断されたものまで、ステロイドの吸入療法を中心とし、必要に応じて吸入指導も行いながら診療しています。また長く続く咳には、アストグラフという特殊な検査機器を用いて気道過敏性の有無を評価し、咳喘息等の診断を行っています。風邪薬の使えないアスピリン喘息には特別なスケジュールでの喘息の診断、指導も行っています。

喘息を有する患者の肺癌手術においては術前から術後まで呼吸器外科と呼吸器内科が連携して治療を行います。

慢性閉塞性肺疾患 COPD(chronic obstructive pulmonary disease)

慢性閉塞性肺疾患は、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することで生じた肺の炎症疾患であり、 呼吸機能検査で正常に復することのない気流閉塞を示します。気流閉塞は進行性であり、臨床的には徐々に生じる体動時の呼吸困難や慢性の咳・痰を特徴とします。

当呼吸器センターでは、COPD患者さんに総合的な治療を実践してまいります。安定期COPD患者さんには禁煙指導、薬物療法に加えリハビリテーションスタッフとともに運動療法を中心とした包括的呼吸リハビリテーションを実践してまいります。また、その他の治療法として, 在宅酸素療法、肺容量減少手術、インフルエンザワクチンおよび肺炎球菌ワクチンなどによる感染症の予防等を病態に応じて実施し、増悪期には必要であれば人工呼吸管理(非侵襲的陽圧換気療法あるいは気管挿管下の侵襲的陽圧換気療法)を進めてまいります.

初期・後期研修の方へ

当院の呼吸器センターでは、内科・外科の垣根を越えて総合的な医療がスムーズに行えるとともに、日々の診療の中での相談はもちろん、難渋している症例や紹介症例を合同カンファレンス・合同回診等を通して多角的に検討できる環境にあります。またこの良好な連携のおかげで、それぞれの専門分野に専念でき、自身の目標に向かって豊富な経験を積む事ができます。臨床のみに留まらず、研究にも力を注いでおられる先生方の姿勢にも刺激を受けています。

豊富な症例と優しい先生方の熱心な御指導の下、当院呼吸器センターでぜひ一緒に成長していきましょう!
(呼吸器外科後期研修医 高嶋美佳)